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撮影がいつの間にか始まった。邪魔をしてやりたい気持ちを押さえる。
キャンプ場から借りてきたテントを侍の吉良と出会ったばかりの少女が組み立てていく。
撮影前に段取りを組んでいるだけに手際が良い。流石はプロの役者達だ。台詞の掛け合いもうまいレスポンスを繰り広げている。
街の中にテントが張られた。アスファルトに杭を打ち込んだと言うわけではない。テントを止める鉄の杭は花壇の砂に突き刺さる。あとはシージで誤魔化すのだ。街の背景も天候も自由自在だ。その演出が気に食わない。監督とも良く揉めた。
遠い昔話だ。
しかし、堕落したとはいえ、豊島の演出の良し悪しくらい区別が付くし、あのときの屈辱を忘れたわけではない。
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