第1章

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「周りの女がどうオレの事を思っても、オレの気持ちはミユキ以外には向かない。 ミユキがオレを信用してくれていれば、いいだけの話じゃないの?」 涙が止まらない私に諭すように言いながらも リューマは、自身の行動を否定的に言われた事に気分を害してしまったようで 声音は冷たいままだった。 「夫婦って信頼しあって絆が強いもんなんじゃないの?」 「………………」 「こんな小さい事で揉めるもの?」 「………………」 「オレはただ、ミユキの傍にいたいから事務所にも所属しないでいたけど、 ミユキがオレを目障りに思うなら しょうがないよな」 「………………」 リューマは哀しそうに私を見つめていたかと思うと フイっと顔を前方に向けた。 ユラリと参降る雪片の煌めきと、リューマの透明感のある肌が淡さって、端正な横顔は 一瞬息が止まってしまうほど 美しかった。 リューマって、 人を惹き付けてやまない人だ。 リューマはゆっくり腰を上げた。 「二人が待ってるから行こう」 リューマは 崩れた気分の私に触れようともせず 真っ直ぐ駐車場へと足を向けて歩き始めた。 今こそ リューマの腕で肩を抱いて欲しいのに……… ぬくもりで温めてほしいのに……… グチャグチャになった感情を取り払って欲しいのに……… 冷淡な態度を取り続けるリューマに 本音をぶちまけてしまった事への後悔の念と 自己嫌悪で 消えて無くなってしまいたかった………。 先に駐車場に戻っていた相川さんとヨシが 泣き晴らしている私を見て驚き ただならぬ私とリューマの雰囲気に 場が変な沈黙で包まれた。 それを破るようにリューマが鍵で車をアンロックして 「早く乗って」 と不貞腐れた声でみんなを促した。 相川さんは助手席に、リューマと私は行きと同様に後部座席に乗り込んだ。
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