第1章

3/26
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
私の手はにわかに震えていた。 勇人先輩が、望月裕子にキスをする………! そんなのイヤだ……… イヤ………。 私なんて、軽い気持ちから勇人先輩に近付いて まだダンス部に入って知り合ってからまだ数ヵ月くらいしか経ってなくて 幼馴染みの望月裕子の方がよっぽど 勇人先輩と過ごした月日は長いワケで キスされるに値しているかもしれなくて……… だから 勇人先輩は 絶対キスをする………。 「………目を瞑れよ。」 勇人先輩の声が、 私の胸に鈍く響いた。 「………………」 勇人先輩が望月裕子の肩にそっと手を置く。 もう、 ムリ。 見ていられない。 私は手に持っていたハンバーガーが入っている紙袋をギュッと握りしめた。 そして無造作に地面に置いてあった先輩の鞄の側に置いて 二人にバレないように 静かに踵をひるがえした。 先輩が 自分以外の人にキスするなんて イヤ………! そして 彼女でもなくて 好きでもない人に キスできる勇人先輩が イヤ………! でも、その私の独占欲が 堪らなく先輩の事が好きなんだって事に 気づいてしまった。 でも、きっと、 勇人先輩はハナってコの事が好きで 忘れられないでいるんだ。 私は全力疾走で家までたどり着くと 靴を脱ぎ捨てて 2階の自分の部屋へと一目散に階段を駆け上がった。 「愛?! 帰ってきたなら早くご飯食べなさい! 今夜は父さん、遅くなるみたいだから。片付けも手伝って。少しは家の手伝いもしなさいよ!」 下のキッチンから出てきたお母さんが階段の下から勢い良く怒鳴り付けてきた。 今、下に降りたら、こんな泣き晴らした顔見られたら何言われるか分からない。 お腹はぐぅぐぅ煩かったけど 空腹でも、食欲なんて全然なかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!