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続・尻1
どうにも体が動かない。動かないというか自由が利かない。
そうか。どうやら俺は、厄介なものに感染してしまったようだ。感染してそして発症したのだろう。
そういうことだと理解した。
眼が閉じられないというのは、そう、本能が見ることをやめないのだ。目の前で震えているあのかわいらしい尻にカブリツキタイという衝動をオサエキレズ、飢えている。ドウシヨウモナク飢えている。
だか、ソレダケカ?
俺は必死に考える。いや、それはもう必ず死んでいるだろうと、そうわかっているのだが、それでも考える。
だが、ソレダケカ?
食いたい。確かに俺はクイタイと願っている。欲している。切望している。
しかし、そこにはもうひとうどうしようもない感情がある。それらを凌駕してしまうようなおぞましい何かが、屍鬼としての完全なる感染者になるのを邪魔している。
それは、尻だ。いや、それこそ尻なのだ。
その豊満な肉感をしっかりと味わいながら、愛でながら、褒め称えながら尻にカブリツキタイ。
いや、だめだ。かぶりついたら、大事な尻が台無しだ。そんなことは俺にはできない。できようはずがない。
では、尻意外ならカブリツキタイか? カブリツキ、貪りつくしたいか?
いや、だめだ。
尻は尻だけで尻にあらず。
尻の上にあるそのくびれも、尻の下に伸びるしなやかな足もなくてはならない。上半身から下半身にかけて、カミが創りたもう芸術的なラインは、首筋から腰にかけてのすうっと伸びたその先に、絶対なる存在として、母なる大地の象徴として尻は君臨するのである。
その尻にあてがわれる細く白い指先はエロスへの開放を誘う役割を持つ。長く伸びた黒い髪、半空きの口元、自らの尻をまさぐる指先に注ぐ、いやらしい視線。
女というのは、女の部位、その所作は、すべて尻のために存在し、男はその尻に抗うすべを持たない。
それが尻だ。
つづく
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