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逆島断雄(たつお)殿
あなたにこのことを伝えようか、朝方まで迷いました。まだ早いということで、お父さまはあなたに秘伝「止水」の第二段階については教授していなかったからです。
今となっては、あなたに真の奥義を教えることができる人は、この地上にはおりません。ですから、わたしはただお父さまの言葉をあなたにそのまま伝えることしかできません。
東園寺の叔父(おじ)様との試合の前夜、お父さまはこうおっしゃっていました。明日は秘伝の一「動の止水」だけでなく、秘伝の二「観の止水」を発動させることになるかもしれない。そのときは自分も相手も無事には済まないだろうから、覚悟を頼む。
わたしは不安になって、あなたが負けるのですか、お身体(からだ)はだいじょうぶですかと申しあげました。お父さまは笑って、「観の止水」がうまく働けば、まず負けることはないとおっしゃいました。結果はその通りになりましたが、残念ながらわたしには秘伝の二がいったいどういうものか皆目わかりません。
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