第二話 最初の犠牲者

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 僕らは皆の元に帰って来た。先程お風呂に行った高野さんは、パジャマに着替えており、タオルで濡れた髪を拭いていた。その姿が何だか艶めかしくて、しばらく無言で眺めていると、僕の胸を、ヒカリが肘で小突いてきた。 「痛て」 「ふうん、雄太ってああいうのがタイプなんだ」  ヒカリは不機嫌そうにそう言った。彼女が何故嫉妬しているのか僕には理解できない。実際に僕はヒカリに去年告白したけど、彼女は他に好きな人がいるの一点張りで、見事に玉砕。それなのに、何故僕が他の女の人を見てはいけないのだろうか。 「ところで律子は?」  健一はいつの間にかいなくなっていた律子のことを気に掛けていた。 「お風呂よ」 「ああ、そうすか」  律子も風呂に行ったらしい。こんな不気味な館で一人になれるなんて、彼女も意外に勇気がある。  僕達はとりあえず手持ちの食料を一か所に集め、幸い水道は通っているので、水には困らないこともあり、ライフラインの面では心配はないことが分かった。 「ねえ、隣良いかしら?」 「ああ、どうぞ」  僕の隣に高野さんが座って来た。高野さんは横目で見ると凄い美人で、僕は年甲斐も無く緊張してしまった。 「坊やって、何だか女の子みたいね。色白で可愛い」 「昔から言われてることです」  小さい頃はよく女の子と間違われていたな。 「なあ、律子の奴、遅くないか?」  健一がペットボトルの水を飲みながら言った。言われてみれば遅い気がする。 「そう言えば変だね」  僕の肩に突然、水滴が落ちて来た。 「ん?」  見ると雨漏りのように、水滴が天井から漏れ出ている。 「雨漏りかな?」 「ちょっと待って、この部屋の丁度上にお風呂場があるのよ」  高野さんは神妙な面持ちで言うと、僕らは思わず言葉を失った。そして次の瞬間、僕と健一は階段を駆け上がり、律子のいるバスルームを探した。
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