第二話 最初の犠牲者

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 僕は震える体に鞭打ちながら、それでも食い下がることにした。このまま健一に脅されて負けるなんてプライドが許さないし、事実、僕は正しいことをいているのだから、少しは耳を傾けて欲しい。 「僕は怖がらせたくて言っているわけじゃない」 「へえ、そうかい。でもよ。明らかに怪しんだよなお前がよ。律子が死んだというのに、随分と冷静だよな。ええ?」 「そ、それは・・・・」 「実はよ、広間に戻る途中に、佐藤さんと相談したんだ。お前が律子を殺したかも知れないから、ロープか何かで縛っておいた方が良いんじゃないかってな」  僕は佐藤さんの方を見た。佐藤さんは僕には眼を合わせずに、健一の方に視線を合わせていた。 「ちょ、ちょっと待ってよ。雄太がそんなことするわけないでしょ」 「悪いなヒカリ、でもよ。こいつしかありえないんだよ。それに白だったら白で良いじゃないか。一応予防のためだよ」  僕は諦めた。どうやら健一と佐藤さんは僕が律子を殺したことにしたくてたまらないらしい。ならば僕もそれに従ってやる。どうせ、君達にとっては僕なんてその程度の価値しかないのだろうから、僕が消えて平和になるというのなら、そうすれば良い。だが、この館は呪われている。君達だって危ないんだ。 「良いよ。僕はどうすれば良い?」 「そうだな。こういうのはどうだ?」  健一は僕の耳に小声で囁いた。僕は彼の言葉に一瞬耳を疑ったが、彼が本気なのだと悟ると、大人しく従った。  結論から言うと、僕は館のテラスに連れて行かれた。佐藤さんはこの館を事前に調べていたから、内部の事情は大体知っているらしい。僕からすれば、その時点で佐藤さんが一番怪しいのだが、僕が律子を殺したというのだから仕方がない。僕はテラスにある、古い木の椅子に座らせられると、両手をロープで後ろ手に縛られて、そのまま放置されることとなった。次の朝までだ。 「じゃあな、また明日」  健一は戸惑う女性仁達を強引に納得させると、僕をテラスに放置したまま出て行ってしまった。いくら屋根が付いているといっても、横殴りの雨では、体に雨水が当たるのは確実だ。こんな場所で、朝まで過ごすなんて、僕はきっと死んでしまう。
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