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なぁ・・・クシュッ・・・ジルラグ・・・さんは・・・
ジルで構わん。
・・・ジル・・・は・・・なんでこんな雨の中にいるんだ?
寒そうに腕をさすりながら未だ止まない雨を見上げる。
ジルはそんな和臣の体に
自分のなぜか濡れていない上着をかけ、
その手を肩に置いたまま静かに空を見上げ目を閉じる。
・・・我(わたし)には何もない。
親の地位。代々築いて来た国。親が持つ城。
人の足元ばかり見る同盟国の者たち。
我のものは何もない。
・・・あるじゃん。ジルはジルのものだろ?
空を向いたまま話すジルはこっちを見ないまま話す。
そんな彼に言葉を返し、
肩に掛かる彼の上着が落ちるのも気にせずに、
背の高い彼の頬に背伸びして両手を伸ばす。
ジルが俺を見下ろして、
目を合わせたのを確認して口を開く。
俺。あんたのこと何も知らないけど。
ずっと寂しそうな顔していたあんたに、
言おうと思っていたことがあるんだ。
“泣くな。そんな寂しそうな顔をするな。
俺が死んだらいつか、あんたの傍に行ってやるから。”
和臣の言葉に目を見開くジル。
そしてそのままふっと優しくほほ笑む。
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