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その日は風が騒いでいた。
というのも、付喪神たちが何かを感じ取りまるでその何かから逃げるように駆けめぐっていたからだ。もちろん見ることのできない人間は、今日は風が強いなぉと思う程度でしかない。
そんな風に乗るように月天楼と呼ばれる京にある大きな神社に、金と銀の珍しい毛並みの狼が2匹。静かに社の屋根の上に降り立った。
《・・・・へぇ・・・やはりあいつらの封印が誇び始めているようだな。》
〈・・・ふふっ・・・そのようですね・・・彼らは参加なさるでしょうか?〉
狼が人の言葉を話すことを咎める者はこの場にはなく。
金の狼が先に言葉を発し、銀の狼が相槌を打つことで話は繋がっていく。
《さぁな。・・・器となる存在がいるかどうかが問題じゃね?》
〈とりあえずは見守りましょうか・・・何れにせよやる気のある付喪神たちも器を探し動き回っているのです・・・器同士が出会えば自ずと始まりは訪れます。〉
《チッ・・・しばらくは留まるぞ。》
屋根の上から人気のない路地裏に飛び降り、人の形へと姿を変える。
金色の狼はオレンジに近い茶色の髪に青の瞳。
銀の狼は白銀の髪に銀色の瞳。
・・・二人はそれぞれ着物姿で京の町へと消えていった。
空に黒い影がひとつ通り過ぎていくことに気づかぬまま・・・。
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