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―場所は変わって南雲家―
真っ白な袴に着替えた蒼は、地下室で正座をして静かに瞼を伏せその時を待っていた。
「蒼・・・」
「・・・すまない・・・」
心配そうに声をかける母と、色を持たずに生まれた兄たちの悲しげな声に後ろ髪をひかれながら立ち上がる。
『兄さんたちは悪くない。この道を行くかどうかは俺自身が決めたことだ。』
開いた左目にいつもの眼帯はなく、深く澄んだ蒼がそこにはあった。
いつも幼馴染と一緒にいる時の雰囲気とはガラリと変わり、
澄んだ水のようにただ静かにそこに立ち、兄たちへ礼を込めて深く・・・深く頭を下げた。
どのくらい頭を下げていたかはわからないが、どこかすっきりした顔を上げ、
母と兄弟たちの間をすり抜け、儀式の間へと歩みを進めた。
先ほどいた地下室よりもより深く・・・階段を下りていく。
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