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「おいおい、本当にこの辺にいるんだろうな?」
黒を主体に、黄色のストライプ模様が入ったジャージのフードを深く被ったその男は、ただ独り、虚空に向かって声をかけた。
他人の目から見れば、おそらくそのように映ることになるだろう。しかし、男は決して独り言を吐いた訳ではない。
両翼を象った縁に、緑がかった青色の石が嵌め込まれたネックレス。男がその身につけているそれに対し、言葉を放っていた。
男は、車通りが多い道路に面した歩道の上にいた。すぐ目の前には、4階建ての古びた校舎が構える校門があり、学校名には『麻野南高等学校』と記されている。
学力の高い学生が通っているのか、それともその逆なのか。男が立つ20メートルほど先に建つ校舎を見ただけでは、それは分からない。だが、そんなことは男にとってどうでも良いことだった。
「気配が動かないっていうなら、おそらくはここにいるって感じか…」
男は、先ほどの道路から外れた位置にある駐輪場に目をつけ、場所を変える。駐輪場付近にも道路はあるが、車通りが少なく、通行人の姿も疎らだ。
極力、一目のつかない場所で時を待ちたい。その願いを叶えるかのように、この駐輪場を視界に捉えることの出来る位置に、やや広目の公園があることに男は気がつく。
公園へ移動しようとしたとき、男には懐かしく感じられるメロディがその耳に届いた。予鈴の音である。
時刻は午後3:40。授業が終わったのか、それとも別の理由であるのかは分からないが、もう間もなく学生たちが下校のために外へ出てくるだろう。
ここに訪れた目的を達するその瞬間を思い描きながら、男は再び足を動かした。
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