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「あんた、何で俺がこの指輪を持っていることを知っていた?」
「そんなの、こいつがその力を感じ取ったからよ。その様子から察するに…あんた、こいつらの力を使ったことがないな?」
正直に答えるはずもない。そう考えながらも発した言葉であったが、男は拍子抜けするほどあっさり返してきた。男が"こいつ"と称するのは、その首もとにあるネックレスだ。
空気を操る力を持つそれと、水?を発生させてみせた右手にはめられた指輪…
男がこれらのことを"こいつら"と言うことからみて、どうやら超常現象を起こせるものは、この他にもあるらしい。そして、それらは互いの居場所さえも感知するという。
このやり取りの間にも、男の周囲に集まる空気の密度は着々と濃くなっていく。
和樹は、男へ対する返答ではなく、この場をどう凌ぐかだけを考えていた。
先ほど、突風を防ぎきった渦巻き…あれを発生させることさえ出来れば良いのだが、その方法を和樹は知らない。
「ようやく力を使うみたいだからなぁ…楽しませてくれよ!っと」
はしゃぐ子供のように、気分高々に声を弾ませる男の方から、強烈な逆風が放たれる。
和樹を後方数十メートルほどは吹き飛ばすであろうその突風は、これまでの比ではなかった。
周囲の電柱や木々をなぎ倒しながら迫るそれは、もう1秒としないうちに抵抗手段がない少年へと衝突する。
衝突まで残り2メートルほど迫ったその時、和樹の瞳に映る世界が停止した。実際は時間が止まったわけではなく、スローモーション映像を見ているような感覚と表現するのが適当だろう。
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