宝石少女と男子高校生

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スポーツ界隈でよく言われる『ゾーンに入った』状態に非常によく似ているその現象は、彼の集中力が最高頂まで達した証拠でもあった。 周囲の音も消え去るなか、和樹の意識へと届く声が一つ。 "イメージです。私のこの力は、和樹がイメージすることで発現するんです!" イメージ── 今、この場面で必要なもの。一瞬間に思い浮かんだのは、先刻と同様、あの渦巻きの姿だった。 静寂な世界の中、地鳴りのような音が身体中に響き渡る。しかし、これは実際に地面が揺れているわけではない。 直後、和樹の右手が水のような液体に包まれた。その瞬間、強烈なまでに力が身体に流れ込む感覚が和樹を襲った。地鳴りのような音も徐々に大きくなっていく。 それと同時に、和樹の見る世界も少しずつ、だが確実に速度を上げていった。 刹那の後に、バーン…と、大きな爆発が起きた。巨大な破裂音と、それに伴う衝撃が和樹の身体を後方へ一回転させた。 爆風により、一時的に前方の視界を塞がれるも、次第に晴れていく。 浮遊中の男と、尻を地面につけたままの和樹との間には、路面のコンクリートを抉り取るまでに激しく渦巻く壁が存在した。それも、その前よりも一回り大きな壁が。 壁に衝突した突風は、その流れを二手に分け前進を続けるも、風力は格段に落ちた状態で和樹の両隣を吹き抜けていくだけだった。
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