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和樹が威力よりもその速度を重視したと予測したそれは、一呼吸置く間もなく、彼の腹部を直撃したのだ。
それに加えて、予想を遥かに上回る衝撃が身体を襲ったことによる思考回路の一瞬の停止が、その威力を何倍にも増幅させた。
しかし、その攻撃がきっかけに和樹の思考は高速回転を始めた。銃撃を食らったような痛み、そして、こちらが使えるのは水の力…
思い浮かんだものは、あまりにも単純であったが、試してみる価値はある。
僅かに霞む視界に再び男を捉えた直後、和樹は右拳を突きだし、その親指、人差し指を立ててみせた。
その動きに反応し、彼の右腕が軟らかな感触に包まれる。渦巻きの壁を造り出した時と同じように。
その指先に、バスケットボールほどの大きさの液体の塊が生成されたと同時に、自身のものとは思えないような雄叫びを上げた。
「いっ、けえぇぇぇっ!!」
和樹を襲った衝撃がきっかけとなり、思いついたのは、彼も使用できるであろう攻撃手段。『水鉄砲』だ。
指先に現れた水の球体は、勢いよく男へ向かって伸びていく。電信柱並みの太さを誇るそれは、よもや水鉄砲とは言いようがなかった。
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