宝石少女と男子高校生

22/53

53人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
言い改めるのであれば、さしあたり水の柱とでもすれば良いのか。男が放ったものと比べて目視可能、速度も特別速い分けでもないそれは、男の胸元に迫っていく。 しかし、衝突を回避するために必要な要素が多いそれを、男は軽々と宙で1回転することで、やはりかわしてみせた。 無情にも、水柱は空を切った。 "まだです。まだ、諦めないで下さい!" 当然、諦めるつもりなどなかった。 イメージを続けろ、思考を巡らせろ──自分自身に言い聞かせるように、脳裏で叫ぶ。 和樹のイメージのその先で、水柱はその軌道を変えた… 水は、型に縛られない。時に激しく、時には穏やかに。一方向に流れ続けることもあれば、時には枝分かれもする。 自由に動き回り、自由にその形すらも変えていく。 水の流れの不確定さが、思い浮かんだ瞬間に、水柱は空柱で180度回転した後に、再び男へと迫った。 軌道を変えたとはいえど、その速度が上がったわけではない。当然、男も再度それをかわしてみせる。しかし、何度かわされようとも、水柱は男の後を追うように軌道を変え続けた。 「畜生、何なんだよこれはっ……」 ここに来て余裕がなくなったのか、幾度も水柱を回避し続ける男の怒り混じりの声が、先ほどよりも離れた位置にいても、和樹の耳元まで届く。直後、水柱は遂に男の左足を捕らえた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加