宝石少女と男子高校生

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その足先から這い寄るように、男を呑み込もうとする液体であったが、突如、勢いよく飛沫を上げて消え去った。 おそらくは、呑まれつつあった左足付近の空気の流れを操った結果の事象なのだろう。 男の攻撃に関しては、渦巻きの壁で防げることは二度の経験上分かっている。しかし、和樹の攻撃についても、相手にとっては決定打にはならない… ───相性が悪い 両者ともに思った、これではいつまで経っても埒が明かないと。 男が最初の一撃を放ってから、ここまでで約5分程経過している。和樹の体感としては、それよりも長い時間を体験しているかのようだったが、場所は学校付近で、時は下校のタイミング。それほどの時間が経てば、他の学生も徐々に家路につく頃合いである。両者の姿が、第三者の目に入るのは必然だった。 「えっ……な、あの人…浮いてる?」 姿は確認できなかったが、背後から発せられたその声は和樹にも届いた。 学年までは分からないが、少し幼さの残るその声は、動揺を隠せないといった様子だ。 「だ、大丈夫ですか!?」 先ほどとは違う声が、今度は和樹のことを視界に捉えたらしい。いくつかの足音が、彼らのいる方へ近づいてくるのが分かる。 さすがに、無関係な人物を巻き込む気はなかったのか、その真意までは和樹には分からなかったが、その様子を見た男は、さらに上空へと上昇した後に、その姿を消した。
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