宝石少女と男子高校生

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その様子を見届けた後、和樹は電池切れの電動ぬいぐるみのように、力なくその場にへたり込んだ。終わりこそ呆気ないものであったが、理由さえ分からずに己の命を狙われていた状況を乗り切り、更には五体満足のまま事を終えたのだ。 これ以上にない結果なのだろうが、彼にとっての懸念材料が、ここでまた一つ増えた。 先ほどまで、十数メートル前方に浮遊していた男の姿を発見し、和樹のもとへ駆け寄ってきた学生が2名。あの男の姿を見たということは、和樹自身が反撃の一手に出た光景も見られている可能性がある。 2名のうち、小柄で中性的な容姿の男子学生が和樹の表情を伺うと、安堵したように小さく息を吐き、彼へ手を差し伸べた。 「い、意識がはっきりしているようで安心しました。立てそうですか?」 「え、あ、あぁ…すまない」 和樹の通う『麻野南高校』は、各学年ごとにネクタイ、リボンの色が分かれている。3学年から青、緑、赤の順となっており、駆け寄ってきた2名は、両者とも赤色のネクタイ、リボン。2学年である和樹の、後輩にあたるその男子学生は、見た目よりも力強く、和樹の身体を引き上げた。 「あの、さっきの空を飛んでた人。あの人にここまで…?」 目の前で起こる事象への対処に必死だったためか、自身の状態を気にする余裕などなかった和樹は、不安を漂わせる瞳で見つめる少年に遅れるように身体の方へと視線を落とした。 なるほど、これはそういう顔にもなるか。 最初の気流に呑み込まれた時に、枝や小石等もそこに含まれていたのか、ワイシャツは所々細く切り裂かれており、微量ではあるが腹部には流血している箇所もある。 視線を右へ移動させると、右腕の方も、鮮やかな青色を残して擦り傷だらけとなっていた。
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