宝石少女と男子高校生

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「あの男の人を見た時、夢でも見てるのかと…でも、先輩がボロボロになってるのを見て、それで…」 今度は、最初に聞こえた声の持ち主である少女が続けた。先ほどまでの状況を悪い夢とでも思えれば良かったのだろうが、ここにいる3人はそれを現実だと認識している。 しかし、その内、2名はどこまでの経過を認識しているのかが分かっていないなかで、事の発端や、男や自身の特異的な力について詳細に語るのは控えるべきであろう。 少女の発言の内容から、声が聞こえてきた時点。水柱が男を捉え、それが消え去った直後の光景から事を知ったらしい。今は、その可能性にかけるしかなかった。 「実は俺も、急な突風に吹き飛ばされたと思ったら、あの男が宙に浮いててな…状況を上手く呑み込めてないんだ」 和樹の言葉に、二人の不安げな表情は、よりその色を濃くした。 二人とも口を開いたが、先に言葉を発したのは少女の方だった。 「それじゃあ、見ず知らずの人に…それもいきなり?凄い怪我ですし、一度先生にも相談した方が…」 少女の言い分は、全くその通りである。当事者である和樹もそう考えていた。 事の経緯については、おそらく右手にある指輪に宿る少女の声が知っているのだろう。それについては、後で確認も出来るはずだ。 しかし、問題をややこしくしそうであったのが、事が起きたのが学校のすぐ真横であったことだ。その学校の生徒が、身元不明の浮遊する男に暴行を加えられたとなれば、報道レベルでの事件にも成りえる。
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