宝石少女と男子高校生

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少女の声が、そう話してから間もなくのことだ。右薬指にある水色の石が、固体から液体状へと変化し、それにに合わせて、指輪の金属部も形を変えていく。 やがて、和樹の右手を、先刻まで"石の姿"であったそれが、包み込んだと思えば、ゆっくりと彼の目の前へと移動し、その場で浮遊する。150センチメートルほどだろうか、和樹の肩あたりまでの高さまで伸びたそれは、徐々に形を整え、突如、水飛沫を上げた。 目に異物が入り込もうとするその瞬間、人間であれば誰もが取るであろう、目を閉じるという反射反応の後、和樹はゆっくりと瞳を開く。 渦巻きの中へ身を委ねた時と同様、水飛沫についても和樹の肌を濡らすことはなく、物置内に収納された物にも特に異常は見られない。ただ、目の前の光景さえ除けば。 「は……?」 その光景に、和樹は言葉を失った。すぐ目の前に、先ほどまでは存在しなかったはずの少女の姿があったからだ。 正しく表現するのであれば、身に付けていた指輪が液体に。そしてその液体が少女の姿に変化したのである。 指輪に嵌められていた、宝石と同様の淡い青色の長髪と瞳を持つ彼女は、和樹と同年代のようにも見える。 しかし、彼が驚いたのはそれだけではない。その目の前にいる少女が、一糸纏わぬ姿で、そこに存在しているのだ。 そんな驚きの色を知ってか知らずか、素知らぬ顔で少女は続ける。 「私本来の姿を見せるのは、これが初めてですねっ」
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