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さて、どうしたものか。
和樹には目の前の少女が置かれている状況については、大まかには理解できていた。
この少女が、自身のもとにやって来るよう仕向けられていたこと。そう仕向けた人物が何者であるのかは、彼女も知らないということ。そして、帰るところが分からないということだ。
この少女は、確かに和樹のことを認識しているようだが、自身の出自や和樹のもとへ来ることになった目的については、はっきりとしていない。
「まずは、これからどうするかだな。さすがに、このまま家にって訳にもいかないし……」
「えっ、ここに居させてもらえないんですか!?」
少女が驚くのも無理はない。彼女が覚えていたことの一つは、和樹と出会い、生きること。
その内一つは既に達している訳であるが、夕凪家に置いてもらえない限り、もう一つの達成が出来ない。そもそも、共にいられることを前提に、ここまで連れて来て貰えたと思っていた彼女にとっては、信じがたい言葉であったのだ。
家には置いておけない───とはいえ、行く先もない少女をそのままにしておく訳にもいかないからこそ、和樹は悩んでいた。
仮に、同居させようにも、両親にどう説明するべきなのか……適当な理由が思いつくわけでもなく。そもそも、この家には納戸を除いて空室もない。
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