宝石少女と男子高校生

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『いや、違うよ』。和樹がそのような旨の返答をしようと口を開いたその時、彼の言葉を遮るように、美裕のものでもない第三者の声が居間に響き渡った。 「その怪我は、私の所為なんです!」 その声は、和樹の部屋から出てきた青色の瞳の少女ものだった。和樹が部屋を出る際、待っているよう伝えていたはずだったが、様子が気になったのかどこからか話を聞いていたらしい。 焦って割ってはいったせいか、多少息も荒れている様子だ。 「わ、私が和樹と一緒にいた所為で怪我を……」 「え……それってどういう」 少女の言葉は、浮遊男との一件について一切知らない美裕からしてみれば、何の話をしているのかさえ分からないような内容だ。訝しげな表情を浮かべるのも無理はない。 そして、急に少女が割って入ったことにより、更に頭を悩ませる結果となったのが和樹だった。 自身の性格上、そして母の美裕の洞察力から、言い逃れをすることは諦めていた。しかし、最低限の情報のみでこの場をやり過ごす方法はないのかを模索していたからだ。 その思惑は、少女の登場により、更に困難なものとなってしまった。 「和樹、この子の言ってることがよく分からないんだけど。説明してくれる?」 こうなってしまった以上、和樹は一定の事実を美裕へ話すしかなかった。だが、一部の情報は極力違和感がないように話をすり替えながら伝えていく。 帰り道の途中、大声を上げながら暴れる男の子がいたこと。その男に、この少女は追われていたということ。そして、たまたまその場面に遭遇した和樹が、その一件に巻き込まれたこと。 内容自体は大きくことなるが、事の流れに関しては似たような情報が、美裕に伝わった。
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