宝石少女と男子高校生

48/53

53人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
**** 思考時間は約5分。 和樹自身、随分と安直なネーミングだとは思いつつも、少女を『真凛(まりん)』と命名することにした。 名前の由来は当然『アクア"マリン"』から取ったものである。 「マリン、それが私の名前…」 少女は俯きながらそう呟く。 初めて与えられた自身の名。気に入ってもらえたかどうか、和樹にも一瞬不安が過る。そして、少女は今にも泣き出しそうな表情を浮べながら顔を上げた。 「ありがとうございます、和樹!!」 少女──真凛は、その名を大層気に入ったようで、瞳には多少の涙、そして満面の笑みを浮かべながら和樹に思いきり飛びついた。 その勢いに押される形で和樹の座っていた椅子の重心が傾き、そのまま床に倒れる。 和樹は鈍い痛みを感じながらも、自身と共に倒れ込んだ真凛の頭をポンと撫でた。 ここまでに、和樹は母──美裕が出した課題を終えたわけだが、残された課題もあった。 夕凪家は和樹、美裕の二人世代ではない。父──将俊(まさとし)と姉──智恵美(ちえみ)を加えた四人世帯だ。要するに、真凛について説明した内容をこの二人にも伝えたうえで、同居の最終確認を取らなくてはならないわけだ。 その際は美裕からの手助けも期待できるであろうが、正直なところ気が重い。 和樹はそんなことを考えながら、迫るその瞬間に備えることとした。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加