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翌朝。現時刻は午前9時。ジリリと鳴る目覚まし時計の騒音によって目覚めた和樹の横にあるベッドの上に青髪の少女の姿はなかった。もう起きているのかと、1階の様子を見に行っても彼女の姿はない。
昨日起きたことは全て夢だったのか…
2階へ戻ろうとした和樹の背後から、朝食の準備中であった美裕が声をかけた。
「あら、その指輪どうしたの?」
慌てて右手を確認する。
そこには透明感のある水色の石、アクアマリンが填められた指輪が薬指に収まっていた。
声をかけられるまで気付かずにいたが、その指輪はまるで自分の体の一部かのように指に違和感を感じさせずにそこにあったのだ。
和樹は、母の問いに答えることも忘れ、急ぎ自室へと戻った。
身体中の痛みは一晩で無くなったわけではない。この痛みこそが、昨日の出来事が現実である証拠である。和樹は自分にそう言い聞かせながら、右手薬指にある指輪へと声をかけた。
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