宝石少女と男子高校生

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**** 「へぇ、それであんたにしては珍しく遅刻をしてしまったと」 「あぁ…」 時間は経過し、現在は午後0:45。 昼休み──学生にとって、放課後の次にゆっくりと自由に時間を取ることができるそれを使って、和樹は小学生からの馴染みである五十鈴川 香織(いすずがわ かおり)に、今朝の一件について話をしていた。 和樹にとって、秘密事などを話せるような間柄の友人は多くはない。しかし、彼女はこれまでに何度か和樹の相談を聞いたり、解決のために協力してきたりもした。 良く言えば、面倒見が良い性格である彼女であるが、あまり多くを語ろうとはしない和樹に対して深く詮索しようとはしない。一定の距離感を保つのが上手な人物である。 今年になって別のクラスとなったが、小学校3年生から和樹と同じクラスであった驚木 晃大(おどろき こうだい)も彼女と同じような間柄だ。 「一言、言っていいかしら?」 訝しげな表情を浮かべる彼女は、和樹の頷きを確認すると、1つ大きく息を吐いてから再び顔を上げた。 「遅刻の理由、もっとマシな言い訳は思いつかなかったのかしら」 彼女がそう言いたくなる気持ちは分からなくもない。この言葉をかけられた和樹自身からしてみても、他者から今朝のような話をされても、それを目撃していなければ信じようがないだろう。正直なところ、一件の当事者であっても状況を全て呑み込めているわけではない。 彼女であれば、信じてくれるかもしれない。そんな淡い期待を寄せていた和樹であったが、さすがに現実離れした話なだけあって、そう上手くはいかなかった。 一限目終了後の休憩時間、遅刻の理由について説明へ赴いた職員室での教師陣とのやり取りに於いても、同様の反応であったのだから。
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