宝石少女と男子高校生

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これからしばらくの間、多少なれども教師陣からは自身の発言は真実か嘘であるのか警戒されることにだろう。和樹は二時限目の時間に、そうぼんやりと考えていた。 和樹の供述を、どこからか聞いていた生徒がいたのだろう。昼休みに入るまでの間に発言の内容が一部改変された状態で校内に広がっており、若干の孤立感さえも覚えていた彼にとって、目の前の少女の言葉は嬉しいものであった。 「あぁ、そうすることにするよ」 素直にそう短く返し、話題は香織の朝の出来事についてへと変わっていった。 午後からの二時限分の授業を終え、帰りのホームルームも終了した後に、和樹は足早に学校を出た。和樹は部活動に所属していないため、ホームルームさえ終われば、掃除当番に当たっていない限り、特に学校に残る必要がない。 駐輪場に置いてある、自転車の鍵を外しながら、教室のある方を見上げてみると、教室掃除の当番に当たっている香織が、こちらへ手を振っている姿が視界に入った。 和樹は右手を小さく振り返し、駐輪場を出た。 その日の帰り道や、その後の登校中。数日経過したが、あの日以来、あの老人の姿を見かけることはなかった。 **** 「そういや聞いたぜ、あの変な噂。超速度で走るじーさんの話、あれってマジなん?」 和樹が例の老人と遭遇してから一週間後の昼休み。この日は、和樹のもう一人の馴染みである驚木 晃大も混ざり、香織と三人で昼食を摂ることになった。やはり、どこからか漏洩した話は彼の耳にも入っていたらしい。 彼はカップ麺をすすりながら、和樹と香織の返答を待たずに続ける。 「俺のクラスの奴らにも話広がっててさ。和樹、無遅刻どころか早登校で知られてるから、『はじめての遅刻でパニックになった』だとか、『夢と現実がごっちゃになったんだ』とかの話になっててよ。あまり目立ちたがらない和樹にとって、今の状況はあまりよろしくないんじゃないかと思ってさ」
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