Honey Baby

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「紫朗、そろそろ並べ」 そんなぶっきらぼうな答えしか言えず、そんな自分の感情を持て余しながら縦山は一人で列に並びにいってしまった。 そんな後ろ姿を見て、深雪は酷く落ちこむことになる。 自分ばかりがはしゃいでしまったけれど、何せ縦山は自分のことを覚えているかどうかも分からないのだ。見ず知らずの相手が馴れ馴れしい、などと思われていたらたまらない。 じわりと涙の浮かんだ深雪をみて、右は急にどぎまぎとしてしまう。 「お、おい横山大丈夫か?腹の調子でも悪い?泣くほど痛いわけ?」 可愛い子の涙におろおろしてしまうのは、相手が男の子でも変わらないらしい。 長いまつげがふるふる震えるのを見ていられなくて、右は深雪の肩を支えた。 会って間もない右の優しさに、深雪はじんと温かい気持になった。 「ありがとう右くん。なんでもない…よ。僕達も、早くな、並ばないとね。あと…あの…僕と友達になってくれる?」 うつむき加減で真っ赤になりながらの深雪に、にっこりと右は笑って利き手を差し出した。 「もっちろん。今俺も言おうと思ってたんだ!さ、陣のとこ行こうぜ」 ”陣”というその響きを聞くだけでぴしっと背筋が伸びる感じがする。 右にはもう二度もありがとうと言えたのに、どうして縦山には言えないのだろう。 タイミングを逃してばかりなことに少し悲しくなりながら、けれど諦めることは絶対にしないと心に誓った。 「せっかく会えたんだもん…」 頑張るぞ、と小さく呟くと、ごしごしと涙を拭いた。
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