【遭】

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しんと不気味に静まり返った路地裏に、殴り倒してやりたい、そう思える程――胸糞の悪い声が舞う。 「ぶはっ。男前が台無しだねえ?やっば超ウケんだけど~!」 「ぐっ……あ、っい"」 「ねえ、痛い?」 「今さあー篠塚クン痛いって言ったー?」 ……ああくそいてえよ畜生! 「ねぇ、痛い?」 「っ、ぐっ……、んうっ!!」 悔しさに、力無く握り締めた拳を。 「我慢しなくてもいーよぉ?」 嘲笑と共に踏み潰す靴底。吐き気と眩暈が襲いかかる。 「っ……あ、くっ……ふ」 両の拳を踏み付けられて、ギリッと奥歯を噛み締めた。 「あれ、どーしたのー?」 「あーらら~。痛そ~!」 ……おかげ様で痛えけど絶対言わねえ。 「汚い面だな篠塚」 ……誰のせいだ?てめえ等だろうが。 朦朧とする意識下で悪態を吐き出した。 「全然大したことないじゃーん」 「なーんかがっかりだなぁ~?」 「篠塚ぁ……もう終わりかあ?」 耳障りな雑音に反吐が出そうだ。といっても、完膚なきまでに叩きのめされた俺は意識を保つことで精一杯。 「ざまあ無いねー」 言葉を返すのは当然無理、指一本動かす気力さえも、とっくに失っていた。 「おまえの不敗伝説も今日で終わったな」 ……終わってんのはてめえ等だろうが。 「っ、は……」 ただでさえ血で霞む視界が怒りで真っ赤に染まっていった。
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