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いつからか姿をくらませていた金髪男が、
「あーコレやべまじ気持ち悪っ……吐く」
と、デカいひとりごとを言いながら覚束ない足取りでフラフラと歩いてくる。それを目にした山口が、なぜか慌てた様子で立ち上がると男に駆け寄った。
「ショウタさん大丈夫すか?」
「や……無理。吐いていい?」
「俺も無理っす」
「あっそ」
「大丈夫すか?」
「うっせ吐くぞ話しかけんな」
「……」
「あれ、もしかして“祭り”終わった?」
「いや終わったっつぅか」
「てめケンタ喋んなうっせ吐くぞ」
「!」
細身の黒スーツの男が乱れた前髪を手櫛で流しながら具合の悪そうな視線を山口から外す。おとなしくなった加藤兄弟に気づき軽く手を上げると、刑事の前を堂々と横切った。
「あのショウタさん?」
「うっせケンタ吐くぞ」
「あのもう吐いてますよね?」
「うっせ黙れ、吐くっ」
「いやいやいやいや!」
山口と普通に会話を交わしながら辿り着いた先。壁に手をついた男は堂々と“戻して”いた。
「そんなに心配だったら警察に行方不明者捜索願の届け出を『テメェ仁道会舐めてんのか?! ああ?』あ、ショウタ居たわ」
ふざけたやり取りを繰り広げる刑事が金髪ソフモヒ男に気付いて黙り込む。
『っ――もしもし? もしもしもしもしもしもしもっ、テメェ聞いてんのかっ! 仁道会舐めてっとテメェんとこの署にカチ込むぞワレ手塚ァアアアアアアアアッ!!』
携帯の通話相手が発狂した。
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