爽やかな男。それは医者。

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「お疲れ様、波間北さん。」 優しい声に振り向くと疲れた表情の師長が右腕を振りながら近づいてきた。こんな風に腕を回すのは疲れている時にやる彼女の仕草。 『お疲れ様です、師長。私は疲れていませんよ?だって大好きなお風呂番ですから。それよりも………アヤツですか?新しい先生って。』 身を屈め声を潜めながら点滴台から奴の様子をうかがう私を呆れた感じで眺める師長。 「波間北さん、大人気ないわよ?そんな事してたら逆に目立ってしまうのに…。」 目立つ?!そりゃ勘弁だっ! 勢い良く立ち上がってみるといつの間に来たのか点滴台を挟んだ向かい側に後輩が立っていた。しかも…ウルウルした目で…。 「波間北先輩…。点滴が入んないです。手伝って下さい。」 正直、後輩の【お手伝い】っていうのが苦手だったりする。元々めんどくさがりな私だ。この後輩は分かって言っているんじゃないか? 『がんばれ、青年。その先に希望の光が見えてく…』 「波間北さん、行ってあげて。」 『…………あい。』 師長の優しい声に遮られた私の演説はどっかに行ってしまった。 .
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