第1章

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雉は鬼退治にまた鬼ヶ島に向かい、今度は力及ばす殺された。 そしてまた桃太郎に出会い、鬼ヶ島に向かう。 無事征伐すると、また鬼ヶ島に向かう… 結果は違えど、同じ時間軸の中で永遠に鬼退治を繰り返しているのだ。 それは、全て同じ雉自身の姿であった。 理解できず呆然とそれを見ていた雉は、ふと、僅かな記憶の奥底に眠る、断片的な欠片を見つけた。 拾い集めた欠片は、徐々に繋がり一つの物に繋がっていく。 雉は、その時全てを悟った。 これは、紛いもない自分自身の記憶だ。 知らぬ間に何度も何度も時間が逆戻り、終わりのない鬼退治を繰り返していた。 永久に続く歴史の繰り返しの中で、雉たちの代の鬼退治だけが何故か知らぬ間に繰り返されている。 二重に回り続けていたのだ。 何故、今それに気付いたのか。長い長い繰り返しの中で、自分が初めて鬼退治に行かなかったせいなのかも知れない。 そこまで思考が辿り着いた瞬間、明るい光は徐々に消えていき、不思議な光景を見ることもなかった。
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