第1章

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思い出してしまった雉は、まるで憑き物が落ちたような感覚を覚えていた。 「このわたしは、何度目のわたしなんだろう…?」 そんな事をぼんやり考えていた雉がふと祠の中を見遣ると、母親を祀っている鏡に、ヒビが入っている事に気付く。 鏡をそっと懐に仕舞うと、今のは母親が見せた光景なんだと何故か感じた。 「母上…ありがとう」 死して尚、自分を守ってくれている母親に感謝すると同時に、雉は決意する。 きび団子を拾い上げると、雉は立ち上がり踵を返した。 幾重に繰り返す歴史の中で、更に幾重に繰り返し続ける時間。 その事に、犬も猿も、桃太郎でさえも気づいていないのだろう。 なんの為なのか、どうしてそうなったのかは解らない。 しかし今ここで自分が歴史を変え、進まぬ時に気づいた事で、運命の歯車は大きく動き出していく。 雉は、桃太郎たちのところへと向かう。 鬼ヶ島に、行かなければならない。 歴史の因縁を断ち切る為に、立ち止まった時間を進める為に。 全ての真実を知る為に――― 胸に母親の意思を抱いた雉は、真っ直ぐと歩みながら、力強く前を見据えた。 ―鬼編に続く―
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