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「今から犬と猿を連れて鬼退治に向かうのです」
「そうですか…時に桃太郎さん、そのお腰に付けたきび団子、わたくしめに分けてはもらえないでしょうか?」
雉は桃太郎に懇願する。すると桃太郎は、一瞬きび団子に視線を落とす。
「もちろんですとも。ただ、鬼退治に一緒にお供して頂かない事にはお渡しできないのです。あなたは雉でしょう?鬼の征伐に着いて来てくださいませんか?」
桃太郎は雉を見ると、困ったように眉を下げながら笑った。
(ここまでは歴史と同じで想定通り…ここからが正念場だ)
雉は頭を働かせながらも、辺りの様子も抜かりなく確認する。
疲れ果てた弱弱しい女を演じながら、牙を剥く時を伺っていた。
「はい、煽る通りわたくしめは雉に御座います。喜んでお供させて頂きたいのですが…朝から何も食べておらず眩暈がして動けないのです。どうか、先にきび団子を食べさせては頂けないでしょうか?頂いた暁には、必ずやお供してお力添え致します故…」
悲痛に顔を歪めて雉は桃太郎に縋りつく。
桃太郎は困った顔をしながら、暫し考えているようだった。
「…わかりました。では、お供をお願いしますよ」
そう言うと桃太郎は、きび団子を出すために腰紐を緩め巾着袋を手に取った。
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