第1章

8/14
前へ
/14ページ
次へ
(今だ!) 一瞬の隙をつき、雉は桃太郎の手から巾着袋ごと奪い取ると、桃太郎を突き飛ばして全力で走り出す。 「!!」 勢い余って尻餅をついた桃太郎は、血相を変えて犬と猿に指示を出す。 「追え!」 桃太郎がそう言い終わるよりも早く、犬が凄まじい速さで駆け出した。 少し後を追うように猿も追いかける。 (早く…早く!) 雉は目一杯走りながら、着物の胸元を強引にはだけて肩を出すとさらし姿になった。 太陽の日差しに、雉の白い肌が曝け出される。 その瞬間、大きな美しい羽を広げると地を蹴って飛び上がった。 寸での所で犬の手は届かなかった。 地上では足の速い犬にでも、飛び立って仕舞えば手の出しようもない。 雉は羽をはためかせながら、優雅に舞って高く空へと姿を消した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加