一節 我が心は氷の間に降り来たらば

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「ええ、まあ。私の名前を読み上げたのならその通りです。ですが、一体貴方は」 「亜風里市警、捜査一課の八田上 清一と言う」  しけいの、そうさいっか。 オウム返しにしてはあまりに頓狂な返しをしてしまったことに、私はたった今のみならず、のちのちまで後悔の種として抱えなければならなくなるのだが……それは、別の話として。 ぐるぐると脳内をめぐる思考の渦が、目の前に突如として現れた公的機関とのパイプに驚きこそすれ、一切喜びが無いこと気付いてしまっていた。 「別に昨日の今日で捜査令状だして突っ込もうってワケでもなけりゃ、脅しにかけるつもりも、こちらには無ぇが……聞こえてるか?」 「あ、っは――ちょ、っと待ってもらえますか。1ふ……いえ、30秒ほど」 「? ……まあ、俺は構わんが。取って食う気は無いからゆっくりでいい。事情を飲み込め」
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