一節 我が心は氷の間に降り来たらば

10/10
前へ
/43ページ
次へ
「警部補だ。落ち着いたならいい。俺が何を聞きたいのか。分かるか?」  警部補殿は、何処と無く急かすような口調で問いかけてきた。 分かるか、と言われれば分かる、という他ない。 昨晩の現場で、彼らの到着を待って退避し、名刺をこれみよがしに落としてきたのは私の所業だ。 『啓人』がそれを容認するかどうかは別としても、そうすることがあの時点で最善だったのは事実だと思っている。 此方側には『解決手段の一部』と『究明中の原因の一端』が切れる手札として存在する。あちら側には『より明確な情報の収集手段』と『事件原因の積極的漸減』が期待できる。 それを明確に示して初めて、『交渉』の席に立つことが出来る。 さあ。 交渉の時間だ。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加