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「……で、おやっさん」
「オウ、何だサコ。つまんねえ質問はすんなよ」
電話を置いた上司に対し、佐木下 紡(つむぐ)は質問を投げかけようとして、先手を打って叩き付けられた『事実上のゼロ回答』に吐き出しかけた次の句を奪われた。
つまらない質問、の概念をどこに置くかは知らないが、概ねに於いて分かりきった質問はするな、ということなのだろう。
通話中、言葉を荒らげることも強い否定の言葉を吐くこともしなかったやりとりからすれば、つまりは連絡を取った榊なる相手――話の中身としては青年のようだが――をある程度信用することを前提として動く気でいることだけは理解できた。
どのような言葉で丸め込まれたのかは知らないが、事件現場に名刺を残すなどというあからさまな行為は危険と見るのが普通であろう。
正直な所を言えば、相手の顔を見ても尚『相手を信じない』と言ってしまう自信はあるし、余程のことが実証されない限りはその言葉が覆されない予測が立つ。
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