二節  炎天、陽炎に実を食まれるのこと

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 何をして信用に足るべしとするかは、交渉の内容も事件の有り様も理解していない以上は、分からないのだが。 「……じゃあ、『S』はどうするんです? 引き続き、面倒事だけに絞って調べさせるんで?」 「そうだな。奴の話を聞いてから流れを変えても遅かねえよ。ガイ者がお目見えしちまった以上、遅すぎるっつう指摘はなしだが」  遅くはない、か。  発見された被害者からすれば相当に悠長であり噴飯物の発言かもしれないが、言いたいことは理解できる。 『S』、つまり警察機関の子飼いとも言える暴力団関係者から情報を得るにしても、必要とされるのは確実な情報を得るための指針である。  組織的な寛容が在るかは別としても、可能性があるのなら些細な事でも引き出せるに越したことはない。 「いえ。今からだって何とかなるでしょう。検死結果はもう少ししないと来ませんけど、その、彼とはいつ?」
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