プロローグ 歪み 果てるまで

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 県警本部の捜査一課――世間一般が知るように、そのポストは殺人事件や凶悪犯罪を扱う部署としてよく知られている。  自分たちと、暴力組織と対峙する捜査二課(あらごとたんとう)とが支えあうことで、大都市圏の治安の多くは守られると言っても過言ではない。  一般的にも内部的にも自分達(はながた)がみっともない姿を晒すのは割に合わないのだ。  そういった意味で、ここのところの成果は芳しくない。 「覚えてます? 昨日の現場。  落ちてたガイ者の腕は3日前の胴体と一致したそうですから、一応『殺人事件』としては今のところ1人、ってことになるんでしょうけど。  だったらあの壁とか、何なんでしょうかねえ」 「そりゃこっちが聞きてえよ。最重要参考人が姿消してンだぞ?  普通に考えりゃそいつが怪しいだろうが。だろうが……どう思う、お前」  左だ、と指示を飛ばして、『おやっさん』――こと、八田上 清一(やたがみ せいいち)はむっつりと体を助手席に沈めた。
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