プロローグ 歪み 果てるまで

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 鵺、と佐木下がオウム返しにつぶやく。思わず飛び出した言葉だったが、ああ成る程、と清一も納得したようにうなづいた。  声は聞こえど、跡は残れど、姿は無く現実味がない。  命は着実に失われているというのに、犯罪は確実に起きているというのに、それらに対する対処や対策が浮かばない。  それは、酷く恐ろしい話でもあった。 「どうすればこんな死体を運び込んでこれるんだね」とは、司法解剖を担当する医師の言葉だったが。 「通報者のセンで、どう思う。何件かは、同一人物じゃねえかって話なんだろ?」 「ええ、まあ、それも考えたんですけどね?  それじゃあさっきの女の子はどうしたんだってなるでしょう。食い物にされてるにしたって、不明確すぎるでしょうが」 「……無関係じゃ、ねえだろうな。今日のが関係あるかも含めて、現場に着いてから考えろ。そこ右だ。……命の危険があるなら骨の一本までは俺が許す」
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