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美輝さんとは間違いなく恋人同士になれる。勇は嬉しくてたまらない。
「夢咲さん、有難うございます。何とお礼を言って良いか分かりません」
勇は頭を下げてお礼を言った……が、頭を上げると既に夢咲親子の姿は無かった。
しかし、勇はさほど驚くことは無かった。これまでにも何度も目の前から消えていたからだ。
自宅へ戻る途中、多くの女性達がすれ違い様に
「格好いい~」
「素敵!」
「ハンサムだわ…」
と、ため息混じりにそんな言葉を洩らしていく。
勇は昔を思い出していた。夫婦で歩いていると、通りすがりの女性達が頬を染めながら振り返って俺を見るので、
「やれやれ、素敵過ぎる夫を持つと女房は疲れるわ」……と言って笑った。
富美子は本当に良く出来た素晴らしい女房だった。富美子が亡くなった時、俺は絶対にお前以外の女を好きにならないと心に誓った。
なのに10年後の今、俺は富美子以外の女性を好きになってしまった。美輝のことを思うと胸が熱くなる。この思いはつのるばかりでどうすることも出来ない。
富美子……
お前以外の女性を愛してしまった。本当に……ごめん。
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