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「それが事実ならとても嬉しいのですが、果たしてそんなことは可能なんでしょうか?」
「……と言うと?」
「時間が足りないと思うんです。
……と言うのは、僕はアメリカから長期休暇を取って日本に来ていることになっていますよね。
今日は6月12日ですが、僕が20代でいられるのはせいぜい今月一杯です。
美輝さんに会えるのは、次の活動日の18日です。それから月末まで12日しかありません」
焦ったように言う勇に、望は笑顔で言った。
「大丈夫です。次回から写真クラブの活動日は毎週末土曜日になる筈です」
「本当ですか?」
「はい。私が会長の渡辺さんにそうするようにマインドコントロールしました。今夜辺り電話がかかってくると思います」
「そ……そうですか」
勇は安堵の表情を浮かべた。
何と言う人だろう。改めてこの人は何者なんだ?……と思った。この親子はひょっとして神様の使いかも知れない。
哀れな俺に同情して、力になってくれているのかも知れない。
「ところで私は神様の使いでは有りませんよ」
望はニッコリ笑った。
「お幸せに」
父親が笑顔で言い軽くお辞儀した。
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