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目の前には、背丈の倍ほどもある光の壁がそびえ立っていた。
ふと足元に白い、何かが二つ浮かび上がる。
独特な、金属同士が擦れあうような音と共に浮かび上がったそれは、もう何度もこの地で目にしてきたものだった。
なんのためらいもなく、それに触れる。
そして語りかける。
手を貸してくれと。
それに呼応したかのように、変化が起きる。
白いサインを中心としてあたりに魔法陣が浮かび上がり、二つの人影がその中から召喚された。
一人は赤い衣が目を引く騎士甲冑に身を包んだ男。
一人は黒いドレスに身を包んだ、魔法使いのような女。
そして脳内に言葉が浮かび上がってくる。
『放浪騎士アルバを召喚しました』
『魔女ジャーリーを召喚しました』
放浪騎士アルバ、それに魔女ジャーリーといえば旅の巣柄、手に入れた防具の主だった人物だ。
珍しいこともあるのだな、と内心苦笑する。
彼らに一礼をする。
ゆっくりと、今までの道筋を振り返りながら。
それに応えるかのように、彼ら、彼女らもゆっくりと一礼を返した。
光の壁に指を指す。
それを見た二人は、ゆっくりと頷いた。
「これで、終わりだ」
小さく呟いた言葉。
自分に言い聞かせた言葉。
光の壁に手を触れる。
最初は普通の石壁のように抵抗があったが、直ぐにそれもなくなり光の中へ入っていく。
光を超えた先に見えたのは、ホールのような大きな空間。
そして、自分より大きな体躯をした騎士が2人。
次いで、2人も光を超えてやってきた。
数瞬、互いに睨みあう。
そして、黒い甲冑を身にまとった巨躯の者が剣を引き抜く。
それに応えるように、自らも背にあずけていたクレイモアを手に取る。
さあ、始めよう。
私の旅に、終わりを。
最初に動いたのは白い甲冑を纏った巨躯の者だった。
一瞬で背丈の何倍も跳躍し、手に構える直剣を私たち目掛けて振り下ろしてきた。
3人ともそれを横へローリングして回避する。
すかさず反撃に出る。
アルバは手にしていた直剣で白い巨躯の者の左足目掛けて一閃する。
だがみすみすカウンターを取られる巨躯のものではない。
バク転で直剣を避け、すぐさま距離を取る。
私はクレイモアを両手で握り、黒い巨躯のものへ走り出す。
このように体格差がある敵を相手取るときは、懐に潜り込むのが定石だ。
あちらの白い巨躯のものはあの二人に任せれば良いだろう。
自分が相手すべきはこの黒い騎士だ。
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