第6話 恐怖の来襲

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 僕は両足をバタつかせていたが、そんなことでは抵抗にもならない。健一は笑っている。彼は僕を殺せば満足するのだろうか。 「うああ・・・・」  もう駄目だと諦めかけたその時。僕の脳内に奇妙な信号が送られて来た。まるで電波が送信されるように、新たな情報が僕の頭の中に広がって行く。不思議と苦痛が消えていく。生きようという僕の本能が目覚めたのか、僕は無意識に健一の股間を足で蹴り上げた。 「うおお?」  健一はその場に蹲ると、苦しそうに呻いていた。僕はその隙に彼から距離を取って、最早相棒と化した斧を拾い上げた。さっき、こっそりと床に置いておいたのだ。 「ぶっ殺す」  健一の眼が殺意の炎に燃えていた。僕は逆だ。氷のように冷たい殺意で心の中は満たされている。 「うああああ」  それは悲鳴にも似た絶叫だった。僕は斧を振り上げると、健一の右肩の肉を骨ごと潰した。 「ぐぎゃああああ」  この世のものとは思えない叫び声をあげながら、健一は床の上をナメクジのように這った。右肩からは血が止めどなく流れている。放っておいても彼は死ぬだろう。しかし、僕は必死なあまり、さらに彼の右足を斧で絶った。 「ごおおおお」  健一の右足が彼の体から分離する。よくもこんなにも詰まっていたものだと、感心してしまうぐらいに、多量の血液が噴水のように吹き出し、僕の顔を汚した。何故非力な僕に、人の足を一発で絶つことができたのか分からない。しかし、全身から力が漲って仕方なかった。 「はあ・・・・はあ・・・・」 「殺す」 「ま、待て・・・・」 「待たない」  僕は歯を食いしばり、最後の一撃を喰らわせようと、全身の力を両手に集中させた。ゆっくりと深呼吸して、今度こそ仕留める。もう少し僕が上手ければ、君を一撃で殺してあげられたのに、そこに関しては本当に申し訳ないと思っている。
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