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僕は最後の一撃を健一の頭部目掛けて放った。健一の体がビクッと大きく跳ねて、そのまま動かなくなった。斧にはべっとりと血が付着していて、彼の顔は、彼であると分からないぐらいに潰れていた。僕は脱力して、斧を床に落とした。そしてその場に崩れ落ちた。
「あ・・・・あ・・・・」
涙が出ていた。彼のために流す涙なんて必要ないのに、それでも涙は止まらなかった。彼はもう二度と喋ることはない。僕をムカつかせることもないのだ。それなのに、何故こんなにも僕は後悔しているのだろうか。
「健一・・・・」
健一はただの一塊の肉となった。そして汚物のように床にばらまかれ、その姿からは、つい数分前まで生きていた面影を一部も残してはいない。
「僕が殺したんだ」
初めて人を殺した。雨がっぱはこんな気分を何度も味わっているというのか。よく平気でいられるな。僕はもう耐えられそうにない。少しでも情けを見せれば、僕が殺されていた。これは正当防衛なのだ。しかし、目の前に広がる、油絵のような鮮血と、吹き飛んだ右足を見て、まだ正当防衛だと言えるだろうか。
「何て伝えよう」
僕は斧を放り投げて、皆をバーに呼ぶことにした。恐らく選んだ選択肢の中で一番最悪な方法だ。でも、もうごめんだった。これ以上は耐えられない。
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