第1章-「それ」は突然にやってくる-

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「あー、ごめん、待ったよね」 「お前遅せぇよ、待ち合わせ5時だぞ5時。何してたんだー?」 和樹は昔から仲が良い友達で、中学の頃もこうして学校帰りに遊んだ。大したことはしなかったが、コンビニへ寄ったり、看板や壁にも落書きをした。今思い返せばよく集まったと思うほどの人数を集め、グループを作って街中を歩き回った。 本当に、ただバカなことをしていただけだというのにも関わらず、すごく楽しかった覚えがある。 「いや・・・ちょっとね。色々と・・・」 「なんだ、またハマってたのか・・・」 肩にかけた膨らんだバッグを見て、和樹は苦笑いを浮かべた。 ツンツンに尖らせた髪からは想像がつきにくいが、和樹には案外優しい面がある。今回も、長い時間待たせたにも関わらず、あまり怒っている様子はなかった。 「・・・・・・・・・」 パフェのスプーンを頬杖をつきながらくわえて外を眺めてる人を除けば、だが。 「ご、ごめんね待たせて」 和樹の隣に座ると、向かいの席に座っている葵にも声をかける。 「・・・・・・・・・」 未だに僕にはその横顔しか見せてくれていないが、星飾り付きの緑のヘアゴムで左上を止められたつやのある赤髪は、よく手入れが行き届いていた。 「そんなに怒らないでよ、葵」 「・・・あんたの本、全部燃やしたら許してあげる」 「いや、それはちょっと・・・」 葵は不機嫌そうな顔で僕をにらみつける。 「あんたね、そんな覚悟もないくせにあたしを待たせるなんて良い度胸じゃん」 横では和樹が笑いを押し殺していた。 「葵さ、さっきの態度とはずいぶん違うな。お前さっき太陽が来たのが見えた瞬間めちゃくちゃ嬉しそうにしてたじゃん」 「はぁ?和樹あんた良い加減なこと・・・」 「え、そうなの?それじゃあ葵には何かサービスしなきゃね。お詫びも兼ねてさ。何が良い?」 メニューを取り出すと、葵は勢いよくそれを引ったくる。 「え?俺は?」 「和樹は水で良いでしょ?」 「なんだよその扱いの差は・・・。まあ、良いけどな」 「ねぇ、そういえばさ。太陽、その言葉遣いなんとかしなさいよ。・・・あ、デザートにプリンパフェね」 「プリンパフェね。えーと780円・・・。葵、太っちゃうよ?」 「あんたが気にすることじゃないでしょ。夜にあまり食べなきゃ大丈夫よ」 「いや、僕の財布が・・・」 「何でも良いって言ったじゃない。嘘つきは泥棒の始まり」
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