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「お待たせしました、こちら『女王様風味のプリンパフェ』になります」
タイミング良く現れた店員が、笑顔でプリンパフェを葵の前に置く。
どうでも良いことだが、女王様風味とはなんだろうか。
「おぉっ」
葵が満面の笑みでパフェを掴み取ると、蜂蜜やらチョコレートやら生クリームやらがふんだんにかけられたそれは、水面を思わせるように揺れた。
スプーンでその一欠片が口に吸い込まれるたび、葵は甘くため息を漏らす。
「余は満足じゃぁ」
「ははっ、女王様ぶってやがる」
「なによ、妬んでるの?小さい男ねぇ。ほら、あんたたちにもあげるから、口開けなさい」
「へへっ、わりぃな」
さっきまで女王様がくわえてたスプーンが、プリンの欠片と共に和樹の口に吸い込まれていく。女王様の手で。
「ほら太陽、あんたも口開けなさい」
「え、僕は良いよ。元々葵が頼んだんだし」
「良いからっ。はい、あーん」
開けた口に進入したスプーンは冷たく、プリンは蜂蜜とチョコレートにコーディネートされていて、口内の温度で焼けるように溶けていった。
「どう、女王様気分は?」
「うん、美味しい」
「良かったな太陽、俺との間接キスなんてレアだぜ」
「吐きそう」
「ちょっとっ!?」
葵が和樹を睨み付ける。
「ははっ、わりぃわりぃ。それにしても、俺を優先するとこ、お前らしいな葵」
「はぁ?なに言ってんの?」
「別に?まぁ早いとこ食って帰ろうぜ」
「そうだね。ほら葵、あと3分で出るよ!」
そう言って僕と和樹は席を立ち上がる。
さっきの店員はそれに気づくと、早足でレジへと向かった。
「えっ、ちょっ、待ちなさいよぉ」
後ろからは葵が必死にプリンをかけ込む音が聴こえる。忙しい女王様だった。
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