第1章-「それ」は突然にやってくる-

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「もう本当信じらんないっ!全然味わえなかったじゃないの」 「はははっ、最後の葵の慌てっぷりは最高だったな。詰め込みすぎてハムスターみたいになってたし」 「あぁ・・・すごい形相になってたよね」 「写真撮っときゃ良かったなー」 「そんなことしてたらあんたたち今頃三途の川渡ってるわよ」 「おぅ怖い怖い」 先ほどの飲食店から出ると、僕たちはほんのりと赤く染まった帰り道を三人で並んで歩いていた。 和樹が先頭を歩き、その少し左後ろを葵が、さらにその右後ろを僕が歩く。 「おっ、猫だ」 「えっ、どこっ」 そんなどこにでもあるような会話で盛り上がる二人を、あとからついていくような感じ。僕がこの先頭にいたのは、もうどれ程前のことだっただろうか。 気づけばさっき僕がいた公園で、二人はごみ置き場の前で辺りをキョロキョロと見回していた。 「なにやってんの?」 僕の言葉に葵は顏を向け、真剣な声で迫る。 「猫だってっ」 「は・・・、え?猫?」 「そうなんよぉ、白猫ー。なんかチラッと見えたんだけど、どっか行っちまってさぁ」 「はぁ・・・猫ねぇ。まあ、そんなに珍しいものでもないよね?そこら辺でよく見かけるし・・・」 そう言うと、今度は和樹が振り返る。 「それが普通の猫ならそうなんだけどな。白猫ってのはなかなかここじゃ見かけねぇんだよ」 「そ、白は珍しいのよ。これだけごみごみした町だと、やっぱり汚れとか気になっちゃうのかな、白猫を飼ってる人とか見たことないしね」 「へぇ。そういえば葵は動物とか好きだもんね。和樹は意外だったけど」 「俺も人並みに動物は好きだぜ?まあものにもよるけど、犬猫は大好物だ」 「食べるわけじゃないでしょうが」 公園の入口に入り、わきの草木までわけて探し始めた和樹の背中に、葵のチョップが入る。 と、その時、なにかを見つけたのか、和樹ががさごそと動き始めた。 「お、おい、二人ともっ」 和樹の声に、僕と葵が集まる。 「なに、見つけたの?あたしにも見せなさいよ」 「おう、見つけたぞ。ほれ、あそこだ」 和樹の頭を飲み込んでる草木に、僕も葵も頭を突っ込むと、和樹の指差す方を見る。 「・・・どこにもいないよ?」 「ちょっと和樹、なにもいないじゃない」 「ばか、お前らちゃんと見てみろ。ようく見るんだぞ?ほら、あそこだ」
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