第1章-「それ」は突然にやってくる-

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和樹の指差す方を、葵と僕は目を凝らして見る。 するとそこには、 「見えたか?大人の読み物だ」 わざわざカラーで描かれたページを上に向けて捨てられている、大人向けの本があった。 「和樹・・・?そろそろあんたも春を終えて良いぐらいの歳よね?」 恐ろしいぐらいの笑顔で和樹に春の終わりを告げながら、葵は指を鳴らし始める。 「ま、待ちなよ葵さん、俺の春はまだ訪れてすらいないぜ・・・?」 「あんたに春なんていらないわよ。一生土に埋まってなさい」 「お前目がマジだぞ!?太陽助けてくれっ」 「嫌だよ、自分で蒔いた種でしょ。僕は和樹が去勢されても知らないし」 「そんなっ、太陽の裏切りもんっ」 その言葉の終わらないうちに、和樹は先ほどの草木に再度頭を突っ込まされた。 葵に後ろから頭をがっちりとホールドされている和樹は手足をばたつかせて葵の手を振りほどこうとするが、しばらくすると諦めたのか静かになった。 この公園にはよく足を運ぶが、広さの割に遊んでいる子供が少なく、日頃よく見かける親子連れの2、3組ぐらいしかいない。今でも、遠くの滑り台の方から聞こえる子供のはしゃぎ声は響き渡り、向こうからもこちらの大人気ないやり取りが聞こえているかと思うと、僕は少し恥ずかしくなった。 「そろそろ行こうよ。これ以上いると日が暮れるし、葵もお母さんが心配するんじゃない?」 僕が言うと、葵は和樹の頭から手を放して苦笑いをした。 「別に私は心配しなくても大丈夫だよ。あの人は、親であって親じゃないような感じだから」 葵は、自分の両親をあの人と呼ぶ。 どうしてそう呼ぶことになってしまったのかはここでは割愛するが、それには少なからず僕も関係することだった。 「あ・・・ごめん・・・」 言ってから自分が葵の傷を掘り起こしてしまったことに気付いたが、謝ってもそれは後の祭りというもの。葵はかぶりを振りながら気にしないで、と言い、続ける。 「それよりさ、太陽の言う通り日も暮れちゃうし、早く帰ろ。ほら和樹、あんたもいつまでもそうしてないでさ・・・」 葵が未だに草木の中に頭を入れてる和樹の背中を軽く叩くと、和樹は押し殺した声で口を開いた。 「おい、お前ら・・・見てみろよ・・・」 「また?さすがに2度もそれは通じないと思うよ?」 そう言いつつも、僕は和樹の隣に頭を突っ込んだ。
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