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「くそ、余裕かましやがって。多分ってなんだよ多分って」
「ははは、さあな。ま、ここでぐだぐだ言ってるよりも町に繰り出して女どもにいいとこの一つや二つ見せとく方が懸命なんじゃねぇの。行くぞ」
喚き散らす永倉を置いて言うが早いが原田は藤堂と連れ立ってさっさと歩きだす。
「ま・・・待ってくれよ」
大慌てで立ち上がり先を行く二人を追いかける。
そうして三人はどこに行くだの何をするだの楽しそうに話しつつ仲良く京の町に出かけて行った。
――一方その頃
「ははっ、皆さん盛り上がっていますねぇ。ね、土方さん」
文机に向かい、仕事をしている土方の背中に向かって楽しそうに話しかけるのは新選組随一の剣の使い手と言われる一番隊組長の沖田総司だ。
「ふん、どいつもこいつも浮き足立ちやがって仕事になりゃしねぇ。あの山崎まで馬鹿どもにいらねぇ情報くれやがって・・・。と、そういやぁ総司。お前は騒がねぇのか?菓子がもらえる行事と聞きゃあお前が一番張り切ると思ったんだがな」
手を止め、ちらりと沖田の方を流し見る。
「ははっ、そりゃあ楽しみですよ。でも皆さんは女子からもらえることが楽しみなんでしょう?私は菓子がもらえれば誰からだっていいんです。あ、近藤さんからもらう菓子が一番好きだけど。だから特に楽しみってわけでもないんですよね」
それに・・・と沖田は続ける。
「誰かさんと違って私は子どもにはモテても女子にはモテませんし。」
土方に向かってくすっと笑って見せる。
「うるせぇ。」
土方は照れた顔を隠すように再び沖田に背を向け、仕事を再開しようと筆を取った。
と、その時。
「トシ!」
ばんっと襖を勢いよく開け、新選組局長、近藤勇が飛び込んできた。
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