34人が本棚に入れています
本棚に追加
「分かったよ。やろうぜ、『ばれんてぃん』。だが男所帯のうちで普通の『ばれんてぃん』をするわけにはいかねぇ。当日までに俺が計画を練っておくから。兎に角隊をあげた祭りを開催する。全員参加だ。これでいいだろ」
やり切れなくなった様子で言い放った。
「と・・・トシ・・・やっぱりお前は俺の最高の右腕だ」
子どもの様に無邪気な笑顔を浮かべた近藤は土方に飛びつくいた。
「ぐ・・・苦しい・・・」
顔を青ざめさせる土方とそれを「いいなぁ」と言いながら大笑いして見ている沖田。
この時新選組の『ばれんてぃん』があんなことになるなんて・・・彼らはまだ知らない。
いや、二人だけは知っていたのかもしれない。
発案者の土方と土方の考えを読むのが得意な沖田。
彼だけは土方がただ楽しい行事を催すわけがないと勘付いていたんだ。
この部屋で何も知らずに無邪気に喜んでいるのは近藤だけ。
新選組にとって波乱の一日となる『ばれんたいん』は明後日。新選組隊士の運命やいかに。
日が変わり、『ばれんてぃん』を翌日に控えた夕方。
夕餉を前に全隊士が大広間に集められた。腹をすかせて不平不満をたれる者、突然の召集に好奇心旺盛な顔をする者、逆に不安そうな表情を浮かべる者、理由を自分の所属している隊の組長に尋ねる者で広間はごった返していた。
いつもなら召集前に説明のある幹部も、なぜ集められたのか分からず、少し落ち着きがない様子である。
最初のコメントを投稿しよう!